本を読んだり、読まなかったり

455 ジュリアン・バーンズ 『イングランド・イングランド』 古草秀子訳 東京創元社

とても面白かった。イギリスのワイト島という小さい島を観光用にイングランドらしい国にしたてるプロジェクトが大成功をおさめる。従業員はその島で昔のイングランド人のように生活し、それを観光客が眺めるというもの。(ごく小規模なものなら今でもアメリカのプリマスなどですでにある。)働いているスタッフはだんだん自分が演じている人間に同化していく。嘘のイングランドがホントになっていく。このあたりまではよく出来たエンターテインメント小説という感じだったが、最後の章での「アングリア」と名前を変えた元イングランドの描き方が大人だなぁと思う。「イングランド・イングランド」という題名は、イングランドに呼びかけているようにも感じられた。

最初の章が「イングランド」、次の章が「イングランド・イングランド」、最後の章が「アングリア」。実際のイングランドの中にできた小さいイングランドがやがて強大になり、元のイングランドが希薄になるのだが、それが最後にはまた存在感を持つという、一種の入れ子構造。もしこの本をイングランド観光旅行に持っていって読んだら、また更に入れ子になって、更に頭が混乱しそうだ。誰かやってみて。
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by tummycat | 2009-06-21 11:12