本を読んだり、読まなかったり

459 カズオ・イシグロ 『日の名残り』 土屋政雄訳  中央公論社

まずまず楽しかった。読みながらどうしてもアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンの顔がちらついてしまったけど。(映画を見ていないにもかかわらず!) 女中頭のミス・ケントンの感情の揺れがいきいきと自然なのに対して、執事は感情を抑えてしまうというか、感情を言葉にすることができにくいというか、感情を認識することが難しいらしい。いかにもイギリス人でかつ教養のないクラスの人間。でもこれってどの程度リアルなのかなぁとも思う。以前に某先生が「あれはおかしい。あんな執事なんかいない」と憤然と言ってたけれど。そして作者は実際の執事にはひとりも会ってないらしいけれど。まぁ面白かったからニセモノでもいいのか。

The Remains of the Day(「一日の残滓」と「一日の残りの時間」という意味がある)がいい感じだ。最後の夕方、もうひとりの執事が出てきて主人公に「振り返るな、残りの人生を楽しめ」というシーンも素敵。(だがやや素敵すぎるかも。)

文学批評的には「信頼できない語り手」の例として必ず名前が出る作品なので、一学生としては語り手の信頼できなさをいちいちチェックしながら読んだのだった。
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by tummycat | 2009-07-07 19:15