本を読んだり、読まなかったり

462  シャーロット・ブロンテ 『シャーリー』 都留信夫訳 みすず書房

面白くてあっという間に読んでしまった。作品としては『ジェイン・エア』ほどの効果的な構成はなくて、たくさん出る人物の登場のさせ方など、上手いとはいえないのだけれど、とにかく圧倒的な生命力があって魅力がある。小説の設定としては、ある社会の未婚の男女が中心で彼らが結婚するまでの話なのだが、オースティンのように結婚自体が小説のゴールなのではなく、恋愛の成就の先に人間としての自由を賭けているところが決定的に違う。また当時の世界情勢(ナポレオン戦争のただ中)がヨークシャーの経済にどのように影響を与え、登場人物たちの生き方を左右させているかまではっきりと描きこんでいるのもオースティンと違うところ。

おとなしくて内省的なキャロラインとはっきりと自己主張をするシャーリー、工場主としての仕事のために個人的な感情をおさえがちなロバートと、家庭教師の身分を捨てて金持ちの教え子に結婚を申し込むルイは、それぞれが分身なのだろう。

メアリ・ウルストンクラフトからヴァージニア・ウルフに至る女性作家の系譜の中で、元気に光っている作品だ。シャーリーがキャロラインに語るイブが、ミルトン的なイブ(生まれつき男性に劣り、堕落して男を不幸にする)ではなく、巨人族の母であるのびのびした女として描かれる場面が印象的。

シャーリーやキャロラインがそれぞれ自分たちを抑圧する者に対して反撃する様子は痛快だ。たとえば、生活に困った貧しい村民が工場を襲撃したとき、それを予想して自分の工場を自衛したロバートのことを批判する司祭に、シャーリーはこう言う。

「駄目よ、ヨークさん、ご存知のようにあなたのことは大好きだけど、あなたの主義主張のなかには全然好きになれないものがあるわ。(... )貴族だろうと、民主主義者だろうと、一つの階級のことを馬鹿みたいに滅茶苦茶に褒め上げたり、聖職者だろうと、軍人だろうと、他の階級のことを喚き倒し、王様だろうと、乞食だろうと、個人を不当に扱ったりする。そんなのを見ると本当にむかむかするわ。」

はげしく同感。

シャーロット・ブロンテが現代にいたらきっとブログをやるだろうけど、オースティンはやめておくだろうなと思う。
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by tummycat | 2009-08-09 09:48