本を読んだり、読まなかったり

465  高山宏 『目の中の劇場』 青土社

たいへん力の入った本だ。<視線>について、ロココに始まってロマン主義時代のゴシック趣味で盛り上がり、ビクトリア朝には視に淫した経緯を迫力がある語り口で論じる。

ゴシック小説、幻灯、パノラマという大衆文化の働き。今は写真週刊誌やテレビだ。自分もその世界の中にいるはずなのに、額縁を通して世界を見ることで自分は安全な位置にいると考えてしまう。

マルクスとディケンズとシャーロックホームズは同時代というのは不思議な感じだ。ピクチャレスクの「美的距離」がそっくり「疎外」と読み替えられたという指摘はなるほどと思った。ビクトリア時代にはたとえば葬式が大きなビジネスだった。貧しい人も生きている間はみじめでもせめて死んだらまともな葬式を出したいと思ったらしい。

視線という切り口で人間についてここまで論考できるすごい人。
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by tummycat | 2009-08-17 08:40