本を読んだり、読まなかったり

488  斎藤美奈子 『趣味は読書。』 平凡社

年輩で結構本を読む人という想定読者に対して、こういう人たちが決して読まないであろうベストセラー本を筆者が代わりに読んでレポートするという企画。あとがきによると、当時平凡社は業績がかんばしくなく苦しい営業を続けていたのに、この企画で○○万部みたいな数字がどんどん出るのが辛かったとのこと。

ミステリー業界は謎が多いと筆者は言う。へぇ…。わたしも筆者と同じでミステリーは全然読まないんだけど、そういわれるとなんとなくそうなのかと思う。ミステリーを読むのはミステリーマニアで他の読者は読まない。またミステリー系は書評などを書くときも絶対ネタばらしをしてはいけないとされているので曖昧なことしか書けないから、結果として批評が甘くなっている。ほうほう。

あと、『海辺のカフカ』のところで、「真偽のほどは不明だか、最近の若い人は比喩と伏線が読めなくなっているのだそうだ。比喩が理解できなければ詩が読めず、伏線がわからなければミステリが読めない。けれども彼らは瞬間瞬間がおもしろければよく、前後は気にしないという」とあって、これなんかもすごく感心した。もしこれが本当なら、あと100年後ぐらいの文学研究者は「この当時は実は読者側にこのような変化があったのダ」という論文を書いたらどうか。

他にも歴史の教科書の話など部分的に面白いところもあったが、内容がベストセラー本なので全体的にはかなりつまらない。想定読者たちはこの報告を読んで「やっぱり読まなくてよかったのだ」と納得するんだろうな。
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by tummycat | 2009-11-07 09:09