本を読んだり、読まなかったり

492  遙洋子 『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』 ちくま文庫

随分前に話題になった本ですが、読んでなかったのです。キャッチーなタイトルのために「中身はそれほどじゃないんじゃ」と心配したけど、中身も充実してた。これは(1)「年輩社会人が大学に入り直して若い学生と一緒にがんばって勉強しました」という、ドキュメンタリーものとしても読めるし、(2)女性学についてちゃんと勉強したいという人のちょっと変わった入門書にもなりそうだ。わたしは(1)として読んだので、彼女の動機が切実であることに胸を打たれた。今まで読んだこの手の本は、退職したおじさんが「いやぁ、大学入ったけど趣味なんですよ」などと余裕をかましつつ若い学生と机を並べて楽しい毎日というパターンが多かったが、これは全然違う。関西のテレビタレントが限られた時間でなんとか相手を論破したい、女としての自分の尊厳を守りたいという気持ちがしっかりあって、そのために勉強しているところがわかりやすい。最初は文献の難解な日本語におののいていた著者が、この本の中でだんだんそんな学術用語を使いはじめたり(まだだいぶムリがある感じだけど)、文献から引用したりする。がんばってる感じがすごく伝わってくる。文庫のあとがきの「読者の皆様、御購読ありがとうございました。この本の中にある私のくやしさが私だけのものでなく、私の感動が私だけのものではないことを願ってやみません」にじわっと来た。

ところで著者は、芸能関係者には東大で勉強していることをできるだけ伏せていたそうだ。なぜなら(他の大学ではなく)東大の名前を出すと相手の反応が冷たくなる(あるいは無視される)ことが多いからだとか。わかる気がする。「お茶の水」でも「阪大」でも「一ツ橋」でも、はたまた「早稲田」「慶応」でも全く問題ないのに、なぜか「東大」と言われると、相手の反応が妙にこわばるのだ。わたしも数年前にネットで知り合った人と会って飲むようになったとき、「どちらの大学なんですか?」と気軽に訊いてその人が「東大です」と答えたとき、その人はごく普通にしていたのに正直いってわたしの方は反応がちょっとこわばってしまった気がする。なんでなんだろ。ほんと不思議なブランドだ。
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by tummycat | 2009-12-14 15:00