本を読んだり、読まなかったり

495 保坂和志 『明け方の猫』 講談社

「明け方の猫」は夢の中でとつぜん猫になってしまった人間の目に映る世界を描く。猫好きなら必ず「自分が猫になったら…」と妄想してしまうものだけれど、それを小説にするにはよっぽどディープな猫好きでないといけない。いいかげんなことを書くと、よりディープな猫好き読者に見破られてしまう。その点、この人は猫ディープ度はかなりのもの。猫の前脚の繊毛がいかに機能的にすぐれているかが繰り返されて、その目の付け所が深さを示している。昨日今日の猫好きではないのだ。ミイという、もう自分の身体をなめることができない年寄り猫が出て、これがとてもいい。猫が子猫のときから年老いて死ぬまでを見守ることが、猫好きに与えられたたいせつな仕事である。もうひとつ「揺籃」という中編も夢のような妄想の世界で面白かった。
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by tummycat | 2009-12-24 11:22