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本を読んだり、読まなかったり

513 内田樹 『映画の構造分析』 晶文社

図書館で借りて2,3ページぱらぱらと見て、すぐに読むのをやめた。つまらなかったからではない。すごく面白そうだったのでこれは自分で買わねばと思ったから。線を引きながら読みたいので。

「エイリアン」「大脱走」「ゴーストバスターズ」「裏窓」などのハリウッド映画を分析するもので、たとえば「エイリアン」についての「物語 vs 反-物語」や、ヒッチコックが「マクガフィン」と呼んだ「それが意味することの取り消しを求める」ものの指摘など、ブンガクにも応用できそう。とにかく面白い。フロイト、ラカンも応用しているのだが、たいへんわかりやすい。(ただ、あまりにも鮮やかに面白く分析できているというところは、この本の弱みでもあるのかもしれない。)

映画自体とは少し離れて、印象的だった文章があった。ポーの「盗まれた手紙」の<手紙>が「それが意味するものの取り消しを求めるシニフィアン」であり、探偵デュパンが手紙を自分で保持せず他に渡したと指摘したあと、著者はこう述べる。

分析者の仕事は「キープすること」ではなく「パスすること」、uebertragenすることなのです。退蔵してはならない、交換せよ。p138

人間が人間であるためには、つまり症候が寛解して、患者が健常者になるためには、他者からパスを受け、別の他者にパスを送ることができさえすればよいのです。p139


ああ、そうなんだなぁとすごく納得した。これからの自分のことにも通じそうで。
by tummycat | 2010-02-24 11:28