本を読んだり、読まなかったり

517  ジョーン・スミス 『男はみんな女が嫌い』 鈴木晶訳 筑摩書房

原題は Misoginies(女性嫌悪)。著者はジャーナリストだったときに遭遇したヨークシャー・リッパー事件をきっかけとして、このテーマについて考えるようになったらしい。この本で扱われる事例は、ハリウッド映画の女性惨殺、ダイアナ妃についてのメディアの扱い、マリリン・モンローの自己演出、ホロコーストとセックスを組合せた『ソフィーの選択』、サッチャー首相と夫の収入など。最後に、ヨークシャー・リッパーの犯人像の分析と、捜査の当初から犯人を切り裂きジャックと重ね、「被害にあったのは娼婦であり、普通の女性ではない」と主張した警察側の伝統的女性嫌悪について詳述する。

内田樹は『映画の構造批評』で、アメリカの女性嫌悪が西部開拓時代の圧倒的女性不足から生じたもので、西洋一般に見られるものとは違うと述べているが、この本を読むと、アメリカもイギリスも非常に似ているように思える。読んで新鮮な怒りを覚えるというよりも、骨の髄までしみるぐらいわかっていることを再確認させられ、その結果かなり暗い気持ちになった。そこにあるのは男が強い抑圧のはけ口として自分よりより弱い女を犠牲にするという構図。女がよりよく生きるためには、男にもよりよく生きてもらわないといけない。そのためには男が歴史的にどのように抑圧されてきたかを明らかにする必要がある。今は女性学よりむしろ男性学の研究こそ必要だと思う。
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by tummycat | 2010-03-02 09:25