本を読んだり、読まなかったり

519 笙野頼子  『三冠小説集』 河出文庫

「読んだことない作家を読もうシリーズ」はまだまだ続く。世の中には作家が実に多いのだ。今回は「永遠の新人」と呼ばれているらしい笙野頼子。この本は彼女が芥川賞、三島賞、野間文芸新人賞を受賞した3つの作品をまとめたものだが、作者自身のあとがきによると、これらは彼女の代表作ではないらしい。

どれも面白かったが、「二百年忌」が特によかった。ある地方の旧家で、百年に一度、「二百年忌」という行事をやる。いちおう法事なのだが、たいへんな費用を使っての大イベントで親戚や近所の人だけでなく、その家の死者までが参加する。親戚の者はみな赤い喪服を着る。夢の中の話のようなはちゃめちゃな展開なのだが、日本のどこかには似たような習慣があるのではないかとも思ってしまう。こないだ読んだ筒井康隆の「遠い座敷」といい、古い日本の家って面白いものだったなぁと思う。

「二百年忌」はいちおうストーリーがあるのだが、あとのふたつは特にない。「なにもしてない」などは、手の湿疹がひどくなって、「自分は苔になった」と言い出すから、カフカ的変身譚かと思うと、今度は手袋してびくびくして街に出るので安部公房の「他人の顔」みたいなもんかと思ったら、今度は病院へ行って治療を受けるので太宰の「女生徒」みたいと思ったが、治ってめでたしではなくて、それからも実家に帰ったり紀子さんを見かけたりして延々と話が続く。小説全体ではなくて瞬間瞬間があるだけのように感じられ、それは新鮮ではあるけれど全体を意識しながら読むのに慣れている者には、視界が目の前に固定されているようでちょっと辛かった。

あとがきでとつぜん地域猫のことを長々と書くのには面食らった。
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by tummycat | 2010-03-05 09:06