本を読んだり、読まなかったり

522  二葉亭四迷 『浮雲』 (集英社日本文学全集)

書生を経て官吏の職についた主人公の若者が、その職をクビになったために、居候先の親戚の家の居心地が悪くなり、その家の娘ともうまくいかず、悩むという話。途中で、同じ勤め先に勤める男、本田が登場するのだが、本田は上司にうまく取り入るし、娘をいやらしく口説く、いわば主人公とは正反対の男である。

明治になり、それ以前の士族が農業や商業に従事することになり、師弟も大学に入って学問をして、立身出世を目指さなくてはならなくなった。おまけに大学では西洋の思想を学ぶのだが、新しい価値観が自分の中でうまく消化されない。、また学問は必ずしも出世につながらない。明治は大変な激動の時代だった。そんな中で、父親を亡くして叔母の家にいる(なぜか叔父は登場しない)主人公は甘えたいのに甘えることができない。当時の日本の士族の辛い状況。

プロットは漱石の『こころ』にちょっと似ていて、下宿先の娘、自分、自分の友人の男の三角関係。『こころ』ではすでに指摘されているように、二人の男の間に同性愛的な感情がある。『浮雲』の場合は、二人の男はどちらかというと、本人と本人の「影」(ユング)のような関係。いずれの場合も、三角関係のうちの二人の男性間の強い絆が特徴。

言文一致の文章がすごく新鮮でダイナミック。カタカナの使い方などは今でもその影響がありそう。面白かったので、つづいて『平凡』も読んでみよう。
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by tummycat | 2010-03-25 15:48