本を読んだり、読まなかったり

530  ゲーテ 『若きウェルテルの悩み』 新潮文庫

バルトの『恋愛のディスクール』を読みかけたら、やたらと「ウェルテル」が出てくるので、遅まきながらやっとこの名作を読んでみた。中年になったいま読んでもちっとも面白くないだろうと予想していたのだが、意外にも面白かった。前半はウェルテルの自分勝手な若者ぶりが腹立たしかったり、ロッテのブリッ子ぶりに「けっ」と布団を蹴ったりしていたが、ロッテが結婚して三角関係になってからの展開は迫力がある。最後にウェルテルが半狂乱になるあたりは、前半で「けっ」と思った読者も固唾をのんで見守るしかない。

それにしてもウェルテルってよくしゃべる男だ。自殺することに決めてからも、最後の最後までロッテに手紙を書いている。今なら携帯でメールかツィッターか。

しかし、どうして人間は恋愛すると狂ってくるのかなぁ。狂いながら「ああ、自分は狂っている」と自覚しているのに、泥沼から抜け出すことができないのだ。不思議ですよね。

これは25歳のゲーテが自分の失恋の辛さを鎮めるために書いたものらしいが、実際の相手と同じ名前(シャルロッテ)を小説中に使うのはいかがなものか。相手はさぞ迷惑したことだろう。それもまた若さゆえの残酷さか。若者の身勝手な残酷やら女の所有欲やら、人間というのは昔も今もちっとも変わってないという証明みたいな小説。
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by tummycat | 2010-05-17 09:43