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本を読んだり、読まなかったり

今年のベスト5。あるいは黒豆物語。

ただいま黒豆を煮ております…。まだあと1時間は煮ないといけません。台所が寒いので自分はここ、2階の自室におり、30分ごとに台所に下りて様子を見ているのです。水を足したりして。ああ、まだ1時間か。黒豆を煮るのは他のお節を作りながら同時進行でやるべきです。失敗でした。たかが黒豆のためにわたしはまだ寝ることができないのです。

ということで、この1時間を有効に活用しよう。多くのブロガーさんがやっている「今年のベストテン!」みたいなのをやることを突然思い立ちました。

10冊も選ぶのは面倒なので5冊にします。

じゃじゃーん!

ベスト5 夏目漱石 『こころ』 ―この名作を自分が今まで読んだことがなかったという事実に驚かされます。読んでみると、いろいろ不可解な小説で、その不可解さが漱石の魅力になっているんだろうなと思いました。個人的には、「先生」はどうしてあそこで立ち小便をしたのか気になってます。

ベスト4 井伏鱒二 『川釣り』 ―眼圧検査のために一日入院するという非日常のなかで読んだ本。意外に良かったです。釣りって、人間の思うように全然ならない。川があって、魚がいて、人間がいる。この三者が刻々と変化していくわけです。思うようにならない釣りをしながら、井伏さんがごく普通の人間の顔を見せていて、好感が持てます。

ベスト3 樋口一葉 『たけくらべ・にごりえ』 ―いかにも女らしい文体と毅然とした構成のコントラストが美しい。特に「にごりえ」が良かった。たとえば切れない恋愛とか困った親とか泥沼の貧乏とか、なにかにはまってしまって動きようがない事態になってしまう人間の苦しさ。おまけにその苦しさと自分が女であることが密接に関係しているとしたら、悔しい。読んで辛くなる本でした。でもよかった。

ベスト2 ロラン・バルト 『明るい部屋』 ―写真とは何か。内容はたったそれだけのこと。これは評論でもなく詩でもなく小説でもなく、バルトが織り上げた不思議な織物のような本でした。

ベスト1 アガサ・クリスティ 『春にして君を離れ』 ―人生において誰でも感動的な瞬間を経験することがあるわけです。それはもう本当に感動的で、これで自分は生まれ変われると強く思ってしまう。でも、なかなか生まれ変わらないものなんですよね…。その残酷な事実を読者に突きつける小説です。これを読んでいたのは沖縄のリゾートホテルで、主人公と妙に似た経験をしてしまったのでした。ひとりで苦笑い。でも「変われなかった」という経験を繰り返すことで、実は緩やかに変わることもあるのだと思いたい。


ってことで、また黒豆の様子を見にいってこよう。そろそろ煮えてくれ!
by tummycat | 2010-12-30 21:25