本を読んだり、読まなかったり

588 ヴィルヘルム・ゲナツィーノ 『そんな日の雨傘に』 白水社

どうしてこの本を借りたかというと、表紙の写真が良かったから。ただそれだけ。白黒写真で雨の日に並木道のようなところに男がいる。男は雨傘を持っていて、なぜかパイプ椅子ふたつの上に乗って身体を乗り出すようにしているところ。

いわば「ジャケ買い」だからがっかりする可能性は大いにあったわけだが、ほんとうにがっかりした。主人公の男はガールフレンドに捨てられ、手切れ金を残される。彼は高級靴を試しにはいてレポートを書くバイトをしている。いわばニートだ。靴をはいて街を歩きまわる。社会の底辺にいる人間たちに興味を持つのだが、子供っぽい興味にとどまっている。見物するだけで共感もしないし、コミットもしない。リルケや安部公房に似ているようだが全く違う。社会での疎外感も暗さもなくて、「ああ、こういうやつって案外、次の週にはあっさり就職するんだろうな」と思って読んでいたら、本当に就職することになる。新しいガールフレンドも見つかって、デートしながら最後の場面では12歳ぐらいの少年に共感している。

自分が甘ったれだと自覚しているので、わたしは甘えた人間が嫌い。なので終始うんざりしながら読んだ。でもこういう柔軟な軽さがいまは新しいのかもしれない。この主人公が20代ならまだ我慢できたんだけど、46歳なのだ。なんだかなぁ。
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by tummycat | 2011-04-16 08:51