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本を読んだり、読まなかったり

678 東郷雄二  『打たれ強くなるための読書術』 ちくま新書

この著者の本は以前に『文科系必修研究生活術』を読んだことがあり、それはとても参考になったのだが、今回の本はわたしにはイマイチだった。大学生や院生を対象としているとのことだが、参考になるのはせいぜい大学の低学年どまりではないか。「打たれ強い」というのは議論に強いということかと思ったがそうではない。小説を読むときのように受動的に読むのではなく、知識を増すために読む、それも批判的に読む、大人の読書という意味らしい。題名に惹かれて読んだのだが期待したものとはだいぶズレていた。

読書術の例として出している本が偶然にも面白そうだったりした。神崎繁『プラトンと反遠近法』という本は美術の一技法としての遠近法を哲学の立場から考察したものなんだって。読んでみたくなった。また、蓮見重彦のやたらと難解な文を引用して、これは日本語ではなく、ゲンダイシソー語という特殊な言語なので読んでもわからないのは不思議ではないと書いてあるところで笑った。

著者は言語学が専門。そのせいか文学の扱いが単純すぎるのは気になるが、こういう一般的な読書術の本では仕方ないのだろう。
by tummycat | 2013-02-05 10:42