本を読んだり、読まなかったり

096 「残花亭日暦」 田辺聖子著 (角川書店)

田辺聖子の夫はかなり前から具合が悪かった。夫の世話をし、老母の世話をしながら、仕事の量は減らさず走り回る。この日記を書き始めた頃から夫は癌をわずらい入院した。苦しんでいる夫のことを気にかけながらも講演をしたり、原稿を書く。そういう毎日が辛くて「死んだ方がまし」という言葉がこの日記には何度か出てくる。それでも自分を励ましながら夫の最期を看取り、葬儀を手配する。

正直、読んでいるのがしんどかった。そんな時期なら義理を欠いても仕事を少し減らせばいいのに、と思いながら読んだ。

そしてふと思った。<かわいそう>と思ってくれる人間を持っているのが、人間の幸福だって。<愛してる>より、<かわいそう>のほうが、人間の感情の中で、いちばん巨きく、重く、貴重だ。(p183)

亡くなる少し前に、夫は彼女に「あんたはかわいそうや」とか「ワシはあんたの味方や。それ、いいとうて。」と言った。

結局、何が本人の幸福なのかは他人が決めることじゃなく、本人が決めることなのだ。自分は幸福なのだと言い聞かせて、だましだまし生きていく。
[PR]
by tummycat | 2004-03-24 00:00 | た行