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本を読んだり、読まなかったり

097 「日日雑記」 武田百合子著 (中央公論社)

いやぁ、この人はいいなぁ。すごく好き。こういうのを流行りの言葉で「天然」って言うんだろうなぁ。いろんな歳の取り方があるけど、わたし好みだ。読みながら声をたてて笑ってしまった。
(前の日は「残花亭日暦」を読んで泣いてたのに。) 夫が部屋に入ってきたので、「ここ読んでみて。面白いよー」と自分が笑ったところを読ませたが、「全然面白くない」と言われてしまった。う~ん。

夫の武田泰淳の生前のことも少し出てくるが、これもおかしい。
「いいか。ハエタタキをバカにしてはならんぞ」と、まだ私がハエタタキについて何一つ考えていないのに、にらんで言うのだった。
 また、鯛焼についても、一口食べて表と裏を眺めまわしたあげく、「鯛焼をバカにしてはいけない」と私に向かって重々しい口調で言った。「バカにしていません。これから先もバカにしないと思う」と答えても、疑わしげにじーっとにらんでいるのだった。(p115)

彼女の家で飼っている猫がいるんだが、この猫の描写がいい。猫のセリフが実にいい。その猫が老齢になって死んでいくところが悲しい。いつも百合子が朝、トイレから出ると猫がそこに待っている(うちと同じだ!)。「おばさんオハヨー。あたしも元気。何してるの?ふーん、便所ですか」。だが猫は寝箱の中にいて、具合が悪くてもうトイレまで来られない。「知ってますよ。知ってますよ。だけどあたしは行けないの。どーしてなんだろーねー」という猫のセリフ。泣けた。
by tummycat | 2004-03-24 00:00 | た行