本を読んだり、読まなかったり

099 「なじみの店」 池内紀著 (みすず書房)

よかった。エッセイとしてよかったというより、わたしはこの人自身が好きだなぁ。こういう人とお酒を飲んでみたい。

庭に寝ころがっていると目の前でミミズがジャンプしたのだそうだ。その描写がいい。

 からだにまとわりついた土が半ばがた乾いて白く見えたから、かなり前から地表を歩いていたのだろう。それがクルクルとヒモ状に丸まったかと思うと、やにわに高々とジャンプをした。
 あきらかにそれはジャンプだった。(略)
 よろこびを全身で表現したいとき、子供がよくするような跳躍である。じっとしていられず、足踏みしたり踊りまわったりする、若さに特有のエネルギーのあらわれともとれる。愛する人と甘美な時間を過ごしたあと、ひとりで帰る道すがら、思い出すにうれしくてピョンピョン飛び跳ねたくなった感じ。(pp11-12)

新潟の「潟」という字がちゃんと書けなくてそこだけ変になるってわたしと同じだ。ほかにも読んでいて「あ、おなじ、おなじー」とつぶやくこと多し。

つきあっていた女性にあるときお金を借りたときの話もよかった。女性が4つにたたんでそっと渡してくれたお札を、できるだけさりげない調子で受け取る。彼女に対するいとおしさがこみあげた。この人、きっといい恋をしてきた人なのだろうなぁと思う。
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by tummycat | 2004-03-30 00:00 | あ行