本を読んだり、読まなかったり

126 「長いお別れ」  レイモンド・チャンドラー著  (ハヤカワ文庫)

ハード・ボイルド小説としてあまりにも有名。あまり自分の好みとは思えないけれど、ある本にこの小説からのフレーズが引用されていて、それがあまりにもよかったので読むことにしたのだ。その引用とは「さよならを言うことは少しだけ死ぬことだ」。

読んでみた。さすがハード・ボイルドである。主人公のマーロウは「スカッチ」を飲み、「ペイパー」にメモ書きをし、警察で殴られ脅されても渋いジョークを返す男である。現れる女はどれも絶世の美女ばかり。美女は少々屈折しているが、それはあくまでも「少々」であって、あっけなく彼の腕に倒れかかる。ときには「結婚して」と口走る。自分は冴えない仕事をしていて、金に困っているといいながら目の前の札束には手をつけない。あまりよく知らない男に友情を感じ、彼の無実を証明しようとする。

こういう男を素敵と思うかどうかだなぁ。わたしはさっぱり思わなかった。というわけで、チャンドラーの小説を読むのはこれが最初で最後である。長いお別れだ。

最後に、わたしが感動したフレーズだけれど、これはどうも訳が正確でなかったみたいで、清水俊二訳では「さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ」となっている。これはこれで素敵な文句だけれど、わたしが最初に思っていたものとは意味がかなり違っていたのだった。


追記:気になったので原文を調べてみたら、「To say goodbye is to die a little」だった。このa littleを「わずかのあいだ」と訳すのはどうかと思うなぁ。これだと後から生き返るみたいだ。わたしが以前に読んだ「さよならを言うことは少しだけ死ぬこと」の方がずっといいと思う。
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by tummycat | 2004-07-14 00:00 | た行