本を読んだり、読まなかったり

156 「犬が星見た -ロシア旅行」 武田百合子著 (中央公論社)

武田百合子のロシア旅行記。夫、武田泰淳とその友人、竹内好などと共に昭和44年にロシアを横断したときのもの。「富士日記」と変わらない百合子の凄みのある天真爛漫が面白い。面白いのだけれど、でも「○日にXXへ行った」というタイプの旅の記録は誰が書いてもなぜか少々退屈なもので、武田百合子が書いてもその退屈は免れないみたい。

むしろ印象に残ったのは、旅先で見聞きしたことではなく、旅行団のメンバーのものめずらしげな様子や疲れたり喜んだりしたときの、少々子供っぽいような態度かもしれない。長い旅の最後に飛行機のなかで、ロシア語の片言を繰り返しながら上機嫌で酒を酌み交わす泰淳と竹内。それを見る百合子の暖かい目。旅行後数年で亡くなったふたりを回想し、百合子はふたりが酒を飲んでいたあの飛行機がそのまま宇宙船となって宇宙を永遠に回遊していると夢想する。

「犬が星見た」というタイトルの意味はあとがきを読んでわかる。百合子は泰淳からふざけて「ポチ」と呼ばれていたんだね。
[PR]
by tummycat | 2004-12-19 00:00 | た行