本を読んだり、読まなかったり

261 丸谷才一 「樹影譚」 文藝春秋

3つの長めの短編が入っている本。わたしは最初の「鈍感な青年」が好き。
若いカップルのもどかしい感じがなつかしい。ぎこちなく別れた翌日の
二人の会話について、青年の方を鈍感と著者は呼んでいるけれど、
女性の方こそデリカシーがないよなぁ。
そしてわたしは結構、この手の発言をしてしまうのだ。だから彼女の気持ちがよく分かる。
ところでこの人が小説で描く女性はあんまりいただけないなぁと密かに思っていたけれど、
この小説の女の子の描かれ方はあまり違和感がなくてよかった。

ところで2番目の「樹影譚」は村上春樹が「若い読者のための短編小説案内」で
取り上げていたもの。凝った構造で、たしかにとても上手いと思う。
でも肝心の「樹の影が好きな男」という存在がわたしにはあまりピンと来ない。
説得力がないような気がした。(村上春樹も「樹の影」については作者が何かの折りに
ちょっと思いついたことではないかと言っている。)
同じように、以前読んだ「横しぐれ」も文学的推理小説みたいな見事な小説なのだけれど、
肝心のキーワードである「横しぐれ」というものがストンと腑に落ちなくて、
ちょっと気になったのだった。
しかし、そういうことにこだわると小説が完全に楽しめないので困る。
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by tummycat | 2006-07-15 08:13 | ま行