本を読んだり、読まなかったり

262 丸谷才一 「おっとりと論じよう」 文藝春秋

著者の対談集。文学、歴史、言語などの分野の対談だが、文学の対談は悔しいがときどき
わたしの理解など及ばないレベルの高さになる。

この人が別の本でも書いていることだが、昭和天皇の言語能力の低さ(教育による)について
井上ひさしと語っているところが面白い。昭和天皇は相手と対話する能力が非常に欠けていた
ために、日本が戦争に突入することを止めたくても止められなかったという話。今の天皇は
ありがたいことにふつうに話ができる人のようだ。象徴とはいえ天皇の影響力は今でもある。
園遊会で教育委員会の代表者が「全国の学校で国旗を揚げ、国歌を歌わせます」と
張り切って言ったとき、天皇が「やはり強制でないのがいいですね」とすぐに言い返したのはよい。
(「9条どうでしょう」でも何人かが言っていたが、今の日本で右傾化をとどまらせる努力は
天皇ががんばってやっているといえるのかも。)

今の世の中は内容がなくて短いキャッチフレーズのようなセリフが受けるという指摘は
同感だ。小泉首相の言語能力の低さを「あれはきっぱりした性格だから」とか
「意志が強いから」などと思う人が多いようだ。

日本人のメンタリティを表わすと言われる「もののあはれ」の「もの」とは「道理」の
ことだそうだ。日本人は「あはれ」の表現が得意だが「もの」の方ももっとちゃんと
表現できるようにならなくてはならないと著者は言っている。耳が痛い。
[PR]
by tummycat | 2006-07-18 09:48 | ま行