265 小島信夫 「アメリカン・スクール」 新潮文庫
この著者(と表題作)はいわゆる第3の新人として日本文学史の上では
よく見かけるけれど実際に読むことがあるとは思わなかった。
村上春樹の「若い読者のための短編小説案内」で取り上げていた「馬」が入っている
この短編集を読んでみた。「若い読者の...」で取り上げられた短編のうち、
これが一番面白そうだったから。
乱暴な印象としては、安部公房と太宰治と井上ひさしとそして村上春樹を
まぜたような味わい。舞台は戦争中の軍隊、戦争直後の混乱、そして
結婚生活で、それぞれに著者を思わせる特徴のある男が登場する。
「星」と「馬」が特によかった。
安部公房と共通するのは不条理なおとぎ話的な味わいだが、戦争中あるいは
戦争直後の、理性がどうにかなりそうな混沌とした時期に、ある種の人間は
こういう表現にせざるを得ないのかと思う。また村上春樹との共通点は、
ひとりの個人が他者と距離を持とうとしながらもいやがおうにも接触しながら
生きる姿だけれど、これがときどき妙にマゾヒスティックな雰囲気になって、
そのためか太宰を彷彿させることがある。そしてしばしば出てくるアメリカという
異文化に対する葛藤は今の日本にもまだ残っている問題だし、この人の作品は
ままだまだ当分は古くならないだろう。
よく見かけるけれど実際に読むことがあるとは思わなかった。
村上春樹の「若い読者のための短編小説案内」で取り上げていた「馬」が入っている
この短編集を読んでみた。「若い読者の...」で取り上げられた短編のうち、
これが一番面白そうだったから。
乱暴な印象としては、安部公房と太宰治と井上ひさしとそして村上春樹を
まぜたような味わい。舞台は戦争中の軍隊、戦争直後の混乱、そして
結婚生活で、それぞれに著者を思わせる特徴のある男が登場する。
「星」と「馬」が特によかった。
安部公房と共通するのは不条理なおとぎ話的な味わいだが、戦争中あるいは
戦争直後の、理性がどうにかなりそうな混沌とした時期に、ある種の人間は
こういう表現にせざるを得ないのかと思う。また村上春樹との共通点は、
ひとりの個人が他者と距離を持とうとしながらもいやがおうにも接触しながら
生きる姿だけれど、これがときどき妙にマゾヒスティックな雰囲気になって、
そのためか太宰を彷彿させることがある。そしてしばしば出てくるアメリカという
異文化に対する葛藤は今の日本にもまだ残っている問題だし、この人の作品は
ままだまだ当分は古くならないだろう。
by tummycat
| 2006-08-01 08:38
| か行