本を読んだり、読まなかったり

266 大江健三郎 「取り替え子」 講談社文庫

なんと、面白かった。かなりの長さの小説なのに3日で読んでしまった。
こんなに面白くていいのだろうかと不安になる。だって大江健三郎なのに。

考えたらわたしは彼の小説は初期のものしか読んでいないのだ。だんだん文体が
読みにくくなって、こんな文章を読ませるなんてと腹を立ててやめた。
何十年ぶりに戻ってきた。

これは最近の(最後の?)3部作の1作め。どのような経緯で書かれたものか、
ある程度知っているので驚きはしなかったけれど、人によってはスキャンダラスで
意味不明と感じるだろう。
特に(加藤典洋の批評にもあったと思うけれど)、「アレ」と呼ばれる主人公の子供の頃の
暗い事件が中身が分かってみるとそれほど深刻な出来事でもなく、
拍子抜けしてしまう。
普通の小説ならそれは失敗なのだろう。でもきっとこの小説では、作者が何重にも
何かを仕組んでありそう。謎。それでも面白いからよい。

細かいところなのだけれど、作中のアメリカ人が大江(に似た主人公)の道化的な
ところを指摘しているのが印象的。そしてこの小説は全篇、微妙に滑稽味があると
思う。作中で引用されているドイツの物語のように、わざと理性を失い気味に
道化に変身してみせているとも思えた。

もう少ししたら2作目を読みます。それにはその加藤評がそのまま実名で
登場するらしい。どういうことなのか、読むのが楽しみ。
今年の夏休みは大江色に染まるかな。
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by tummycat | 2006-08-06 09:29 | あ行