本を読んだり、読まなかったり

273 ミュリエル・スパーク  「Memento Mori (死を忘れるな)」

英文科にいるんだから英語の小説は英語で読もうとあるとき思い、これからは1ヶ月に1冊は英語で読む決心をしたのですが、いつまで続くことやら。とりあえず、今月はこれ。日本語訳もあるのですが絶版らしい。

読みやすい平易な英語。読み始めたら止まらなくなって電車に乗っているわずかな間も読みつづけるなんて久しぶりだった。登場人物はほとんどが70代、80代の老人。ごくまれに20代の若者が出るがこれはもうエイリアン。50代後半ぐらいだとやっと人間として認められるが、老人たちからすると「ああ、あの頃は苦しい頃なのよねぇ。60代過ぎると楽になるんだけど」と同情を寄せるような存在である。この辺の年齢の線引きが面白い。しかし作者がこの小説を書いたのは40歳ぐらいの頃だったのだ。

いろんな老人のところに匿名の電話がかかる。「死を忘れるな」とだけ告げて切れる電話。同じメッセージを受け取っても、人によって反応が違う。見苦しく慌てる者あり、動じない者あり。それぞれの老人の人生が描かれる辛口のストーリー。中でひとり、自分も老人でありながら老人学と称して他の老人たちの生態を観察するおじいさんがいてキュート。

ミステリーのように見えて実はミステリーじゃない。読みやすくて面白い小説でした。お勧め。
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by tummycat | 2006-10-07 15:23 | さ行