本を読んだり、読まなかったり

294 H. G. ウェルズ 「タイム・マシン」 岩波文庫

英文学の名の通った作品はできるだけ読んどかないとね、と思って手にした本。期待していなかった面白さだった。

科学の進歩に拍車がかかっていた時代。同時に耽美主義やオカルトなどの超自然現象にも人びとが惹かれていた時代である。この短編集には「タイム・マシン」などのSFファンタジーが収められていて、科学的なアイディアはもちろんどうしようもなく古いのだけれど、そんな古さは特に気にならない妙な魅力がある。

一番気に入ったのは「塀についた扉」(変な日本語!)だ。子供時代にある場所で白い塀に緑のドアがあるのを見つけ、そのドアを開けて入る。中は不思議な楽園でその子はそこで心が癒される体験をする。女性がひとり本を開いていて、そのページにはその子のこれまでの生活がそのまま現れている。次のページが開かれ、子供はその中の生活に戻ってしまうのだ。エリート校の秀才となり、成人して成功し、政治家になる人生の過程で彼は何度か思いがけない場所でそのドアを見かけるのだが、なぜか現在の生活を優先してドアを開けないで通り過ぎてしまう。そして・・・。

人生にこういうドアってあるよねぇ。

(この短編の原題はThe Door in the Wallなのだけど、アーヴィング原作の映画The Door in the Floor(未亡人の一年)はこれと何か関係あるのかしらん。)
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by tummycat | 2007-02-06 14:08 | あ行