本を読んだり、読まなかったり

304 須賀敦子 「本に読まれて」 中公文庫

この本は自分にとって特別な本になりそうだ。ウィリアム・モリスのデザインを使ったカバーもいい。今回のリゾート本の最後だったが、ハワイの日差しの下で読むのはぴったりこなくて、途中まで読んで後は日本で読了。

著者の書評や本にまつわるエッセイをまとめたものだけれど、彼女の書評はここまで深くて愛情があるものなのだ。古典の知識や人生経験に裏付けられ、忙しい毎日の中でじっくりと腰をすえて読んでいることが伝わってくる。デュラス、フローべール、池澤夏樹、川端康成など自分が少しは読んだことのある作家についての文章は嬉しいし、日野啓三、コレット、バロウズなど自分が知らない作家の世界をのぞけるのも楽しい。『富士日記』がよかったと書かれてあるのがたいへん嬉しかった。須賀敦子と武田百合子では全くつながらない気がするけれど、つながるのだ。これでもう、須賀敦子はわたしのお友だち確定である(笑)。

池澤夏樹の『スティル・ライフ』の印象的な書き出しにこの本で再会した。

「大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。
 たとえば、星を見るとかして。」

「きみの中にある広い世界」という言葉に立ち止まった。
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by tummycat | 2007-03-05 12:12 | さ行