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本を読んだり、読まなかったり

193 河合隼雄 「昔話の深層」 講談社プラスアルファ文庫

リゾート本の3冊め。グリム童話を取り上げて分析していく。
河合隼雄の本を何冊か読んだ者にとっては、すでにおなじみの
分析もあるが、ドイツでキリスト教以前に信仰されていた北欧神話
の影響など、知らなかった話も多く、図書館で借りて読んだ後で
アマゾンでも注文してしまった。

相変わらずアニムスのことを読むと耳が痛い。たとえば、女性が
アニムスに取り付かれてしまうと、やたら理屈っぽくなって
しまうこと。しょっちゅう反省を繰り返すのだけれど、それは真の
反省ではなく、彼女は自分で責任を持って人生を変えようとはしない。
しかしだからといってアニムスを持つことが悪いことだというのではない。
アニムスを持ってそれと向き合って成長していくことは必要なことなのだ。

また男性のアニマについては、母の影響が強いわけだけれど、
姉のアニマというものもあるのだそうだ。村上春樹の小説には
姉のイメージの女性がよく出ることを思う。「海辺のカフカ」では
父を殺し、母と姉を犯す(ふつうは母だけだと思うけど)運命の予言が
出てくるわけだけれど、そういうのも姉のアニマだろうかと他人事の
ように思ったりした。

ユング流の精神分析学を眉ツバものとして嫌ったり、その分析を
信じすぎることを心配する人もいるけれど、わたしは自分で自分の
分析を試みることは自分自身を距離を置いて見ることの練習だと
思っている。ひとつの事実はいろいろに解釈できるわけで、
ある解釈法によって見る練習をすることは悪いことではないし、
また全く解釈しようとしないで生きることももちろんアリだと思う。
わたしの場合は一時、河合隼雄から離れていたけれど(あまりに
自分に都合がよすぎる気がして)今はまた彼の考えを楽しみながら
学んでいる。

河合隼雄の(というか、ユングの)解釈法の根底にあるのは
人間はつながっているということだと思う。国が違い、性別が違い、
文化が違っても、生きる時代さえ違っても、不思議に共通して
あらわれる精神の現象がある。それはいわゆる「民族のアイデンティティ」など、
軽く超越するものだと思う。そういうところに惹かれている。
by tummycat | 2005-09-09 15:02 | か行