本を読んだり、読まなかったり

194 高橋 哲哉 「靖国問題」 ちくま新書

靖国神社の問題について、自分の知識があまりに乏しいのでこの本を
読んでみた。読み始めてすぐに「ははん、これは左翼の方ですね」と思う。
靖国問題のように左と右と(おおざっぱに)ふたつの意見がガチガチに
対立して硬直している場合、片方の立場の人が力強くその意見を述べても、
相手側の気持ちを変えることはできない。却って火に油を注ぐだけだ。

著者のこの本の書き方は完全に理詰めだ。まず1の段階を述べる。次に
選択肢としてはA,B,Cがある。このうちCが妥当である。次の段階は
AとBがある。これはAを選ぶべきだろう。それから、、ときちんとした
フローチャートに沿ってきちんきちんと進んでいく。

でも人間って、特にこういう人の感情と政治がからんだ問題の場合、
どちらの側もいかにも理性的に論理を展開はするけれど、理詰めでは決して
相手を説得することはできない。人間は感情の動物だからだ。
だからこの著者の表現方法では左の人々を喜ばせるだけで、決して右の人々は
動かせない。著者の結論には共感するし、非現実だと馬鹿にせず理想を
持ちつづけることは大事なことだと思うし、言っていることは概ね支持したい
のだけれど、でもこの人のこういう書き方じゃ、ちょっとなぁと思う。

硬直し膠着したふたつの対立した人々の心をほぐして、本当にいい
解決方法をみんなで探すには(だって、解決方法は絶対に必要なのだ)
もっと従来にない言葉を使って、従来にない態度で臨まないと
だめなんじゃないかなぁ。

とはいうものの、わたしにとってこの本はとても面白かった。
著者のあげる様々な分野の事実(それが真実かはもちろんわからない)の
ひとつひとつに「へぇぇ」と驚いたり感心したり。特にわたしは戦没者の慰霊と
いうことを単に政治的なフレーズだと思っていた(自分自身は全く死者の
霊について無関心だからだ。お盆のお墓参りもしないし。)が、そうでない人も
多いのだということを知った。だんだん「わたしって日本人じゃないのかも」
という気さえしてしまった。

それにしても、福岡地裁が「首相の公式参拝は違憲」という判決を出したとき
コメントを求められて小泉首相は「理解できません」「わかりません」と
16回繰り返したとあるが(わたしもそれをテレビで見た記憶がある。
意地っ張りの小学生のようだったっけ。)そういう人が首相をやってるんだなぁ、
この国は。

追記:
ちなみに小泉首相の靖国参拝について、こういう意見を持っている人も
いるのですね。
「内田樹の研究室」より「靖国というコントローラー」


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by tummycat | 2005-09-11 07:24 | た行