本を読んだり、読まなかったり

437 大佛次郎 『猫のいる日々』 徳間文庫

どなたかのブログで紹介されていた本。前半が猫のエッセイ、後半に猫が出る小説と童話。

著者は大の猫好きで、初めは一匹二匹と普通に猫を飼っていたのだが、そのうちどんどん増えてしまい最後は十数匹になって名前も覚えられない。なぜ増えるかというと、彼の家の前に猫を捨てる人がいるのだ。避妊手術が一般的でなかった時代らしい話。それにしても自宅前を紙袋を抱えてうろついている怪しい人に「猫を捨てないでください」と言わなければならないほどの窮状である。気の毒な話だが、読んでるこちらもあまりに猫だらけなのでうんざりしてくる。

『白猫』という小説は意外によかった。戦争中の話。家でも勤め先の工場でもあまり幸せでない主人公の少女と、雨の夜に出会う野良猫がだぶってくる。戦争中は猫も大変だっただろう。お金さえ出せば何でも売ってくれる闇屋のおばさんが脇役として登場するが、この人の存在が面白い。小説にはこういう女がときどき出てくる。ひとつの世界と別の世界の境目にいるような存在だ。玉音放送があったあと、呆然とする工員や逆上する軍人などが描かれるが、工場の少女たちは闇屋のおばさんのところで大枚はたいてゆで小豆を買って食べる。ちゃんと砂糖が入っている小豆なのだ。
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by tummycat | 2009-03-16 08:50