本を読んだり、読まなかったり

<   2013年 04月 ( 1 )   > この月の画像一覧

685  川端康雄  『葉蘭をめぐる冒険:イギリス文化・文学論』  みすず書房

比較的小さめのテーマの論考集。肩に力を入れず、しかも学術的に誠実に論ずるお手本のような論文ばかり。わたしはこの筆者の授業を受けたことがあり、そのときもさかんに葉蘭の話が出ていたなぁと懐かしく思い出した。あれ以来ずっと道端の葉蘭が気になっている。

個人的に面白かったのは、バーン=ジョーンズとラスキンについてのもの。バーン=ジョーンズはミケランジェロの彫刻にインスパイアされ、自分でも螺旋や蛇状の構図で描くようになったとのこと。そしてそれをマニエリスムだと認識していたという。それで思い出したのは、以前読んだブラウニングの「アンドレア・デル・サルト」という詩。この詩でアンドレア・デル・サルトはダ・ビンチに劣る凡才として描かれているが、よく読むと彼の画風ははっきりとマニエリスムである。ブラウニングは本当にデル・サルトをつまらない凡才として書いたのだろうか。それとも凡才だと見えて実はマニエリスムという新しい芸術の画家であるという評価だったのだろうか。後者の方がずっとひねりがあって面白いと思う。ビクトリア朝にマニエリスムの再評価があったというのなら、後者の解釈が成り立ちそうだ。
[PR]
by tummycat | 2013-04-07 09:10