本を読んだり、読まなかったり

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698 井野瀬久美恵 『大英帝国はミュージックホールから』 朝日選書

だいぶ前に読んだ本。19世紀半ばから20世紀にかけてイギリスで大流行したミュージックホールの話。留学中の漱石も行ったし、エリートのイメージの強いT.S.エリオットもファンだったらしいし、当時のイギリスにおいて忘れてはいけない文化的現象だったようだ。男性だけでなく、家庭の主婦も子連れで行ける雰囲気だったというのが面白い。イギリスでは徐々に愛国的な雰囲気になっていくが、このミュージックホールがアイルランドにも輸入されて、そこではまたアイルランド的に愛国的歌が歌われるようになったらしい。こちらの方を詳しく知りたいけれど、なにか研究書はあるのかな。
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by tummycat | 2013-11-15 10:00

697  中沢新一  『精霊の王』 講談社

9月以来の更新だ。もうこのコーナー、続けられないかも。本を読む時間がないし、読んでも書いている時間がない…。

と思いながらも、気を取り直して書くのである。先日の明治大学での講演で話題になっていた本。非常に面白いのだが、後半はあまりに宗教学的になってついていけなかった。

日本という国家が成立する前に日本中にあった「古層の神」の話だ。「宿神」「後戸の神」、でもある。シュクジ、シュクジン、シャグジ、ミシャグジなど。東京の「石神井」もそのひとつ。

芸能の神、特に猿楽の「翁」(能の曲目の中でも別格)はこの神なのだそう。この神の呼び名は日本中にあるが、「さ」と「く」の音を持つのが特徴で、これは境目を意味している。たとえば放浪の芸能者は定住せず、町のはじや崖の近くなどに住んでいた。それで彼らは「さ・く」のように呼ばれ、彼らの神はサク神になったのではないか。後ろ戸は、舞台の下、大きい農家の奥の間など。座敷童があらわれる。

国家神道の時代になってからはこの神は新しい神社の陰に追いやられてしまった。

折口信夫は「まれびと」と呼んだ。金春禅竹は能の「翁」は宿神だと考えた。また在原業平も宿神であったとのこと。

蹴鞠の話が面白かった。蹴鞠は鞠が地面に落ちないように蹴り続ける遊びだが、これは天と地の距離が離れすぎてしまって、宇宙のバランスが崩れてしまっているからだと考えた人々が、鞠を空中に蹴り上げる儀礼を行うことによって、天と地の間に媒介を挿入してバランスを取り戻したのだとのこと。蹴鞠の名人の前に、子供のような、猿のような、「鞠の精」があらわれる話がとても良かった。
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by tummycat | 2013-11-07 15:29